2026.11.01
エッセイ
「感謝と奉仕」
私は、故福井社長が掲げたスローガンのうち
「感謝と奉仕」
「仕事量の確保」
の2つが印象に残っている。
まず、「感謝と奉仕」だが、
これは禅の鈴木正三の「一鍬一鍬、南無阿弥陀仏」という教えにも
つながっていると思う。
江戸時代の話なので「農耕で土を耕すことが実りにつながる」ので
農作業の土起こしの重労働に感謝の気持ちで行なうという意味、
つまり、自動車販売店だったので「一鍬一鍬」は「一台一台」に繋がり
それぞれのお客様に感謝の気持ちで担当することになる。
そのお客様への奉仕は具体的には「真心込めた接客」につながり、
「真心」が通じて初めて真の「お客様」になるので、
つまり、単に販売台数だけを追うのではない。
最近のディーラーの営業員は行儀作法を徹底されており
「形」の上では高級ホテルのドアマンのような礼儀をしているが、
実際にお客様の心を掴んでいるかが大きな課題。
勿論、買ったクルマに満足する事が最大要因だが、
例えば、納車1週間後の「調子伺い」や「無料点検」の案内や入庫促進という
成績に直接繋がらない活動が「目に見えない価値」で重要なことなのだが、
往々にして、「次のお客」と気が移り、「売りっ放し」が始まるという
悪循環に陥らないことが重要なポイント。
「一台一台」という個別性が重要なのだが、
目先の販売目標という成績に目が行きがちなのだ。
「一台」毎に「感謝」していれば、「顧客満足度」は高まるので、
長い目でみれば、乗り換えや紹介・修理・車検とつながり
「一台あたりの生涯利益」が最大化するのだ。
一方、「仕事量の確保」のスローガンは一見すると
「感謝と奉仕」とは裏腹なものに映るが、これも重要なのだ。
「量」と「質」の問題であり、
幾ら「質」がよくても「売れない」のでは無意味であり
「量」を確保しても「売りっ放し」ではまた無意味なのだ。
つまり、「仕事量」というフレーズを「仕事」と「量」に分解すると
「仕事」は「なすべき事」なので「お客様活動」も含まれ、
「量」は総量なのだ。
確かに、販売台数が営業員の評価であり収入に直結するが
例えば、業者からの紹介で売れば、殆どの事務作業は業者が行い
営業員は作業するだけになり、お客様への存在感はゼロに等しい
という事になるし、
「売りっ放し」という状態にもなり易い。
「仕事」に「質」が含まれているとすると
「仕事量の確保」は「質」を担保した「量」となるので
理想の営業活動を指すことになる。
「質」を客観的に表すのは
「無料点検」「法定点検」「車検」「任意保険」などの実施率になり
それぞれを「防衛率」と呼んでいた。
特に「無料点検」はアフターサービスの第一歩なので、
営業員にとって収益にならないが、メーカーからの点検料が入るので
会社としては非常に有意義なのだ。
私の勤めた会社は日産からトヨタに転換したユニークな会社だが
日産時代は商業車主体の3拠点で業績を挙げており
地元の修理業者からの紹介が大きなウエートを占めていたのだが
トヨタ転換して「乗用車」を取り扱い個人客にシフトしたのだ。
つまり、「業者依存度」が高い販売から「大衆車」で個人需要へ
大きくパラダイム・シフトしたのだ。
このシフトを「仕事量の確保」と表現して、
販売台数に加えて各種の防衛率が大きな指標になった。
つまり、コンピュータを担当した私は
「クルマが売れるシステムづくり」
がミッションだったが、「売る」だけから「質」を高める為に
営業活動のいろんな視点で「防衛率」を算出したのだ。
そして、「競争原理」という言葉があるが、
各項目で拠点毎のランキングを示し
拠点長の管理能力を問うたのだ。
地道に指導された拠点長の営業員は定着率が高くて
ベテランになっても「質」の高い営業活動していたので
「人材育成」にもつながったのだ。
「感謝と奉仕」と「仕事量の確保」という2つのスローガンは
実は同じ視点であり、「質」を高めることでトータルの「量」を確保して
それが「人材育成」につながる事と理解している。
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