2026.05.22
エッセイ
「無料点検」
昔の話をし始めると「危うい」と言うが、
喜寿を迎えようとして「昔話」が多くなってきた。
今回は約40年前の出来事。
私のサラリーマン時代はトヨタ系販売店勤務だった。
新入社員教育で
「トヨタは守りの戦略」
と教えられた。
当時はランチェスター戦略が謳歌しており、
トヨタと日産がシェア的にはほぼ同じ30%前後だったが、
少し高いトヨタは王者の戦略で
例えば、サニーが出た半年後に
「プラス100の余裕」と謳ってカローラを出して圧倒した。
だから、入社前は「ガンガンに攻める営業」というイメージだったが、
最初に「トヨタは守りの戦略」と覆された。
そして、「守りの戦略」の一つに「CR活動」があった。
CはCustomer(顧客)、RはRetention(維持)であり、
一般に言うRelation(関係)よりも
離れて行こうとする動きを引き戻す
という意味合いを持っていると教わった。
自動車には次の
・購入確認期 自分の選択が正しかったかを確認
・購入満足期 期待通りの性能に満足して自慢したくなる
・無関心期 性能に慣れて機械への関心が薄まる
・購入意欲期 何かの理由で次の商品が欲しくなる
4つの心理ステージがあると言われており、
「無料点検」が初っ端にある重要な項目だと教わった。
当時、自動車の商談をお客様の自宅などで行なうケースが多く、
どちらかというと営業所の敷居が高く感じられ、
さらに、ガソリンを入れるのでガソリンスタンドの気安さが勝ち
点検や車検をガソリンスタンドなどで実施するケースが多かった。
CRの一番大事なポイントは「無料点検」と教えられたが、
この「無料点検」はガソリンスタンドや修理業者も行えるので、
ホント、顧客との関係のターニングポイントなのだ。
「無料点検」は登録後1カ月と3カ月に2度機会があり、
この2回を自社の営業所へ引き込むことが重要であり、
サービスマンとのコンタクトが出来て関係性が深まる
という重要な時期なのだ。
この「無料点検」を販売担当した営業員が案内すると
「意外性」が働いて満足度がさらに高くなるのだ。
もちろん、ユーザーには「無料」だが
メーカーから点検費用が支払われるので収益が挙がる
という構図がある。
私の勤めた会社は、日産自動車の商業車販売店を長年経験して、
商業車販売がメインだったので修理業者経由の体質が強かったが、
モータリゼーションの進化で乗用車販売がメインになる時流を読んで
トヨタ転換したが、その名残で売りっ放し的な体質が残っていた。
しかし、大衆乗用車から高級乗用車が加わり、
自社代替が起こり始めたのだ。
つまり、自社代替比率が課題になり、
無料点検の掌握率を高めると
法定点検の掌握率、車検掌握率が高まり、
さらに、自社代替率も高まる連鎖になる。
10数年して、私が改善活動を推進した頃は
車検掌握率は20%程度だった。
私は原点に戻って「無料点検」の自社実施を方針に掲げて
営業所指導を始めて当初30%台だったものが
順次増えて倍増したので、お客様に向かう体質が再構築できて
「車検掌握率」が1年後には40%を超えるようになった。
例えば、年間1万台販売すると
保有期間が約5年だったので5万台の保有車両がある計算で、
40%の車検掌握率になると2万台の車検実施
となったのだ。
このように、「無料点検」という「購買確認期」に
営業員が「調子伺い」を兼ねて「無料点検」を勧誘して
まず、営業所に入庫の糸口を開くのだ。
1カ月と3カ月の2度チャンスがあるが、
この期間の走行状況から「オイル交換会員」を勧誘して
さらに「気安く」営業所に入庫できる状況を醸し出したのだ。
故船井先生は「3回安定10回固定の法則」を教えて下さっているが、
点検修理を営業所で受ける「癖」を植えるのだった。
これで「購入満足」を勝ち取り、
以後の点検・車検・保険などを自社で行なう
という比率を高めたのだ。
特に「保険」は自動車以外にも損害保険があり、
企業のオーナーには満期還元のある損害保険を薦めて
長いお付き合いになっている例がある。
つまり、何かの事情で退職しても、代理店資格を持っているので
保険を中心に関係を維持して、
いろんなビジネスを展開しているケースもあるのだ。
その「始原」は
「無料点検」の誘致で顧客満足度を勝ち取る
というシンプルな構図だったのだ。
しかし、シンプルだからこそ
ガソリンスタンドや修理業者にも重要なチャンスという
危機感を持つようになったのだ。
この指導を徹底した友人のK氏は
「とっちゃんの言う通り、CRしたから保険も多く取れて、
退職してからも保険でビジネスできている」
と漏らしてくれたので「遣り甲斐」を再確認できた。
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